とても小さい頃、夜外で野良猫の喧嘩している声が怖くてしかたありませんでした。なき声、どんな風に聞こえますか？
幼稚園より前の頃、四国に住んでいたことがあります。大きな祖母のお家にくっついて離れのような、トタン屋根の小さなお家があって、壁が薄く平屋で、お庭に面して大きな窓があったと思います。私はとても寝付きの悪い子で、両親の手を焼いた記憶があります。
ある晩、たぶん発情期の野良猫の声だったんだと思います。
そのなき声が「モラ〜ォ」と聞こえてきたのです。恐ろしい音程で色々なバリエーションの「モラ〜ォ」をお布団の中で聞いているうちに「モラ〜ォ、おまえを貰ァ〜ォ」と言っているように思えてきて震え上がって怖かった覚えがあります。その事を母に話すと、「そうよ！早くいい子で寝ないとバケネコにもらわれちゃうよ！」と脅かされたのでした。
赤ちゃんの頃から兄妹のように猫と暮らしているのに、窓の向こうの、暗闇の奥に棲む猫ちゃんはやはりとても恐ろしい存在でした。
壁の薄いトタン屋根の平屋のお家はもうありません。昭和ぁ、な雰囲気のあのお部屋が懐かしいです。
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